Vol.01

「緑茶カテキン」が、
肌内を彷徨う
メラニンを排出!

メラニン研究

総合研究所 ビューティサイエンス研究センター
開発担当研究員 榎本
2023年9月時点

「シワ」と同様に老化した印象を与える「シミ」は年齢を重ねるごとに増加する大人の女性のほとんどが持っている肌悩みの一つです。「シミ」は20代でも出来ますが、徐々に残りやすくなるのがさらに悩みを深刻化させます。これは紫外線による皮膚障害を緩和する役割を持つメラニンが一部分で過剰に作られることが原因ですが、加齢で排出のバランスが崩れて「メラニンを抱えた細胞」が肌の中で彷徨い続けるためです。
そこで、この肌悩みを解決するため、このメラニンの「彷徨い」を解消する研究を開始しました。

メラニンが過剰発生した部位のターンオーバーに着目

表皮では常に新しい細胞が作られており、内側から肌表面に向けて「垂直方向」に表皮角化細胞*1分裂し、角化*2して最終的に垢となって剥がれ落ちることで、健やかな状態を保っています。この表皮の一連の営みを「ターンオーバー」と呼びます。この「垂直方向」の分裂*3は、紫外線等のストレスや加齢により乱れることが知られています。メラニンが過剰発生した部位に着目したところ、表皮の角化指標タンパク質*4がある部分(図1赤色)が減少し、その厚みが減少していること、さらに細胞の中心にある核(図1青色)の並びが左右に広がり、乱れている様子が観察され、表皮角化の低下と垂直に分裂して進むターンオーバー方向に乱れがあることを確認しました(図1)。この分裂方向の乱れにより、肌の中でメラニンが正常に排出されず、肌内に留まる「彷徨い」を生じさせているのです。
そこで、アテニアはこのメラニンの「彷徨い」を解消するため、垂直方向分裂に導くタンパク質のひとつ「PKCζ(プロテインキナーゼCゼータ)*5」の活性化に着目。表皮のターンオーバーを改善し、角化を促進する成分を探索・研究しました。

図1 メラニン正常部位とメラニン過剰部位の角化指標タンパク質 (赤色)の分布と細胞核(青色)の並びを比較

緑茶カテキンが表皮の垂直方向分裂因子(PKCζ)を活性化することを発見

彷徨っているメラニンの排出を促すため、表皮の垂直方向分裂を誘導する「PKCζ(プロテインキナーゼCゼータ)」の活性化に着目し、この垂直分裂タンパク質(PKCζ)が活性(リン酸化*6)されるか検討しました。
その結果、「緑茶カテキン」の一種「EGCG*7」にその効果を見出しました(図2)。

図2 EGCGの表皮角化細胞垂直分裂活性化機能

「緑茶カテキン」が、表皮モデルで垂直方向分裂を促進する効果があることを確認

次に、「緑茶カテキン」の一種であるEGCGが実際に表皮で垂直分裂を促進するかを確認するために、表皮皮膚モデルにEGCGを添加して、表皮の角化を観察しました。その結果、表皮の厚さの増加を確認しました(図3)。EGCGによって表皮細胞の垂直分裂タンパク質が活性化し、表皮の垂直方向分裂を誘導して角化が促進されることによる、表皮の恒常性を保つ機能の増強が推測されました。

図3 EGCGの表皮モデル角化促進

以上から、緑茶カテキンが細胞分裂方向を整えて角化を進めることにより、彷徨っているメラニンや肌老化を進行させる古い細胞の排出促進が期待できます。
アテニアはこの研究結果を、今後のスキンケア商品に広く応用していきます。

  • 表皮角化細胞:表皮を構成する細胞。基底層から押し上げられながら分化し、角層を形成する。
  • 角化:表皮において、基底の細胞が角層細胞へと変わっていく過程のこと。
  • 垂直分裂:細胞の分裂には水平と垂直方向の分裂がある。同じ機能の細胞を増やす水平方向とは異なり、
    垂直方向は臓器の恒常性を維持するために機能性を持つ細胞を作る分裂。
  • 角化指標タンパク質:表皮角化細胞が角化すると増加するタンパク質。本研究ではケラチン10を示す。
  • PKCζ:プロテインキナーゼCゼータ。細胞増殖の制御にかかわるタンパク質。
  • リン酸化:タンパク質機能を調節する化学反応。リン酸基が付加されたタンパク質は活性化される。
  • EGCG:エピガロカテキンガレート。緑茶の主要な成分であるカテキン類の中で最も多く含まれる化合物。