Vol.02

“長寿遺伝子
サーチュイン6”の新知見

エイジングケア研究

総合研究所 化粧品研究所
開発担当研究員 加賀美
2023年9月時点

人生100年時代と言われる現代、「美しさの寿命をいかにして引き延ばすことができるか」という女性にとっての永遠のテーマに対し、アテニアでは時計美容の研究を続けてきました。
肌には一日や一生というようにリズムがあり、このリズムが加齢やストレスで乱れることにより、肌悩みを加速させるのではないかと分析。
そこで、肌悩みを解決するためにはこのリズムを整えてあげることが最善の策であるという考えから、リズムに関わる遺伝子研究に着手しました。

“長寿遺伝子サーチュイン6”の皮膚抗老化機能の新知見

老化や寿命の制御に重要な役割を果たす遺伝子として長寿遺伝子が一般的に知られています。アテニアでは年齢といういわば「一生」という時間のリズムを司り、美肌寿命に関わる遺伝子として“長寿遺伝子サーチュイン6”に着目し、この“長寿遺伝子サーチュイン6”が発現するほど、「オートファジー(自己修復システム)*1」の誘導を促進することを実証しました。

検証:サーチュイン6の表皮細胞におけるオートファジー誘導への関与

培養した表皮細胞を用いて、ひとつは正常な表皮細胞、もう一方はサーチュイン6遺伝子をノックダウンし*2、働きを低下させました。この細胞に紫外線を照射し、表皮細胞の生まれ変わりに重要なミトコンドリア*3のオートファジーの誘導を蛍光顕微鏡で観察し、さらに活性酸素の発生を観察しました。その結果、下の図1に示すように、紫外線照射によりオートファジーの誘導(上段左:赤い部分)が起こります。しかし、サーチュイン6を低下させると、オートファジーの誘導が阻害され(上段右)、さらに活性酸素の発生(黄色い部分)が多くなることがわかりました(下段左→下段右)。

図1 サーチュイン6のオートファジーおよび活性酸素発生への影響

“ブドウの新芽”から抽出した<ブドウ芽エキス>が、美肌の寿命を司る“長寿遺伝子サーチュイン6”を活性

有効成分ビニフェリンの含有量が多い“ブドウの新芽”から抽出した<ブドウ芽エキス>を細胞に添加し、サーチュイン6の活性を確認しました。さらに細胞の修復効果を確認するため、細胞に紫外線を照射し細胞の障害を観察しました。その結果、下の図2に示すように、 “長寿遺伝子サーチュイン6”を活性化させ(グラフ)、正常な細胞の生まれ変わりに関わる「オートファジー(自己修復システム)」を促進し、肌細胞を修復させることがわかりました(画像)。このように細胞の質を高めることで正常なターンオーバが促進され、キメとハリの整った肌になることが期待されます。

図2 <ブドウ芽エキス>の肌への効果

<ブドウ芽エキス>を配合した化粧品を4週間連用したところ、使用前に比べて、2週後、4週後の皮膚の柔軟性が有意に増加し、目もとのハリもふっくらすることが確認されました(図3)。

図3 <ブドウ芽エキス>配合化粧品の連用効果

サーチュイン6に関わる素材の探索では、特殊な化合物に効果があることはわかっていましたが、その化合物を含む植物の探索には苦労しました。ワインを製造している会社から、ワインではむしろ使われないブドウの“新芽”にこの化合物が多いと聞いたときには、これだと思いました。また、サーチュインは、長寿遺伝子という名前がついていることからも多くの研究がされていて、体内では様々な有用な機能をもっていることが研究されていました。その中で、皮膚ならではの新しい機能をみつけるためいくつもの実験をかさねた結果、アテニア独自の機能として学会発表に至ることができました。

  • オートファジー(自己修復システム):2016年のノーベル賞受賞研究。老化による細胞の生まれ変わりは、細胞内で生成される「不要たんぱく質」を細胞自身がリサイクルし、新しいたんぱく質を作る材料にしたり、細胞内をきれいに保つ「オートファジー(自己修復システム)」が調整しています。また、老化制御には“長寿遺伝子サーチュイン6”が深く関わっていることが知られています。
  • 遺伝子ノックダウン:特定の遺伝子からのタンパク合成過程を阻害する遺伝子操作方法。特定のタンパク量を減少できる。
  • ミトコンドリア:細胞呼吸をつかさどる器官で、エネルギーを生み出す。細胞内で分裂増殖する。