Vol.10

細胞へのメッセンジャー
「エクソソーム」を味方に
肌へ、始まりから
新アプローチ

エイジングケア研究

総合研究所 基盤技術研究センター
開発担当研究員 當山
2025年8月時点

“与える”発想から、”正しく調整し、
生み出し、増やす”発想へ !

肌のたるみやハリの低下は、年齢によって増加する大きなエイジング悩みの一つです。ハリを高める方法としては、肌の弾力に重要なコラーゲン・エラスチンを増やすケア等が一般的ですが、私たちは、コラーゲン・エラスチンを生み出す細胞の質に着目しました。年を重ねるにつれて悩みは増え深刻化するものですが、肌の基盤となる細胞の時点でアプローチできれば、より効果があるのではないかと考えました。
長年積み重ねてきたエイジング研究の中で新たに見出したのは、細胞に届いて働きかける「エクソソーム」の可能性です。細胞から分泌されるカプセル状の物質で、「タンパク質」や「マイクロRNA(遺伝子の発現を調節するRNAの一種で、細胞の機能や状態を調整する役割を担う)」を含んでいます。

細胞に届いて働きかける、
「エクソソーム」の働きに着目

細胞から分泌された「エクソソーム」が、別の細胞に届いて取り込まれることで、運ばれた先で「マイクロRNA」が細胞の機能を調節することが知られています(図1)。いわば、大切な情報を正しく届けるメッセンジャー。このように、細胞に働きかける「エクソソーム」は、近年、医療の分野でも着目されており、肌にとっても良い効果が期待できると考え、「エクソソーム」研究に取り組みました。

さまざまな可能性を探索した果てに
たどり着いたのが、
“ヤギミルク”由来の「エクソソーム」!

「エクソソーム」が肌に有用だと考え、素材の探索を行いました。「エクソソーム」は、細胞由来の体液や分泌物をはじめとする、実に多様な素材に含まれています。その中で、ミルク素材に着目して重点的に探究しました。理由は、牛乳や母乳等にはエクソソームが豊富に含まれていることが知られていたためです。結果、ヤギミルク由来の「エクソソーム」が肌にとって良い機能を持っていることを確認しました。
そして、“細胞に届く”という「エクソソーム」の特長を確認するため、線維芽細胞にヤギミルク由来の「エクソソーム」を添加し、細胞内に「エクソソーム」がしっかりと取り込まれていることを確認しました(図2)

さらに、線維芽細胞にヤギミルク由来の「エクソソーム」を添加すると、細胞の老化マーカー(老化とともに増えるタンパク質;senescence-associated β-galactosidase)の減少と、細胞増殖の指標となる遺伝子CCNB1の発現増加を確認しました(図3)。

それだけでなく、ヒト摘出皮膚にヤギミルク由来の「エクソソーム」を添加すると真皮の1型コラーゲン密度が増加することも確認しました(図4)。

※本研究では、倫理的配慮のもとに取得された美容整形などの余剰皮膚を使用。

このように、加齢した細胞を減らし、新しい細胞を増やすことで、ハリ・弾力に重要なコラーゲンを密にする等の優れた効果が期待できます。
新たな発見から、今までは成し得なかった確かなエビデンスへ。多くの女性の求めてやまない、すこやかで美しい肌のための研究が、また大きな一歩を踏み出しました。