
「CCN1」を制して、
30代の複合的な肌悩みを
制す。
未来の美肌への先行投資を!
エイジング研究
総合研究所 基盤技術研究センター
開発担当研究員 横田
2024年5月時点
30代の複合的な肌悩みに、肌の
メカニズムに基づいた先回りケアを
肌の悩みは1つずつ順番にやってくるものではなく、環境やご自身の変化に伴い、徐々に増えて複合的になっていくように感じる方が多いのではないでしょうか。特に30代は、肌悩みが複雑になる、ターニングポイントと言える年代。そんな30代に向けて、対症療法的にスキンケアを増やしていくよりも、肌のメカニズムに基づいて先手を打つケアを行えば、よりしっかり効果を実感していただけるのではないか?・・・そんな期待と想いから研究を始めました。
鍵は、タンパク質「CCN1」に
ありました
7年間にわたり、複合的な肌悩みの要因を探索しました。その中でようやくたどり着いたターゲットが「CCN1」(Cellular Communication Network Factor 1)(脚注1)というタンパク質でした。「CCN1」には、炎症を誘導する作用があることがすでに知られていましたが、私たちの研究で初めて、皮膚において肌の乾燥とエイジングに関わることを見出し、2020年に化粧品の国際学会で発表(脚注2)し、上位10題の優れたポスター発表に選出されました。2022年に成果を論文にまとめ(脚注3)、そのあとも、「CCN1」と皮膚の関係や「CCN1」をコントロールする方法について、更にあらゆる角度から研究を進めていきました。
「CCN1」を制する者が美肌を制す。
最適なコントロール成分を求めて
肌悩みの実感に直結するのは何といっても表皮。そこで、私たちは特に「表皮のCCN1」に着目して解析を進めました。「CCN1」は表皮の中でも、特に真皮との境目にある「基底層」に存在していることがわかりました。表皮細胞に「CCN1」を減らす処理を施すと、肌の保湿力に関わるタンパク質である「フィラグリン」や「アクアポリン」が増加すること(図1)、さらには真皮においても、肌を支えるコラーゲンや肌の弾力を担うエラスチンが作られやすくなり、皮膚全体に良い効果があること突き止めました(図2)。また、「CCN1」は、加齢や酸化ストレス、炎症といった刺激により、細胞の外に分泌されやすくなることもわかりました。皮膚には多くの細胞が存在しているため、分泌された「CCN1」が近くの細胞に作用し、連鎖的に乾燥やシワが起こりやすい環境になってしまいます。これらの結果から、「CCN1」の分泌量を適切にコントロールすることが、肌の保湿機能やエイジングケアに重要であることが明らかになったのです。

※CCN1が多い状態を1.0とした場合の比率
どうすれば表皮の「CCN1」をコントロールできるのか?私たちは、何度も実験を繰り返して「CCN1」を抑制できる成分を見出しました。延べ30種類にも及ぶ原料評価の果てに、「ペパーミントエキス」にはその成分が特に多く含まれており、実際に表皮細胞において効果的に「CCN1」の分泌を抑制することも確認できました(図3)。

※濃度0%を1.0とした場合の比率
バリア機能へのアプローチこそ、未来への先行投資
バリア機能は健やかな皮膚の基本。だからこそ、バリア機能にしっかりアプローチできれば、連鎖的に肌状態は好転すると考えます。今回見出した結果から、「ペパーミントエキス」による表皮内部の「CCN1」ケアは保湿力や真皮環境を整え、肌状態を好転させる鍵になると期待しています。さらに、この作用をより強化するべく、「CCN1」が分泌されにくい環境を作るために、皮膚表面のバリア機能を高める工夫も一緒に取り入れると有益であることを突き止めました。角層でバリアとしてはたらく「ユズセラミド」を一緒に配合することで、表皮全体のバリア機能を整えながら、未来のシワケアまですることができるのです。この最先端の研究をさまざまな形で応用することで、さらなる価値をご提供することができると期待しています。
- 脚注1)CCN1 (Cellular Communication Network Factor 1)。全身に存在する分泌型のタンパク質。皮膚では、乾癬などの炎症性の疾患やコラーゲン代謝との関連が報告されています。
- 脚注2)第31回 国際化粧品技術者会連盟 (IFSCC) 横浜大会2020 にて“How does sensitive skin age? -Possible mechanism based on what skin cells are really communicating-”として学術発表。
- 脚注3)Scientific reports第12巻、Trehangelins ameliorate inflammation-induced skin senescence by suppressing the epidermal YAP-CCN1 axis(2022年)