Vol.05

肌そのものの
「浸透力」を高める、
全く新しいアプローチ

エイジング研究

総合研究所 ビューティサイエンス研究センター
開発担当研究員 鈴木
2023年9月時点

肌そのものの「浸透性」に着眼し、新たな可能性を模索

年齢とともにお肌がごわついたり、化粧品の浸透性が悪くなると感じている方は多いと思います。ピーリングなどをしてみても、一時的に改善はするけれどまたすぐにごわつきを感じてしまう・・・
そのようなお悩みに対し、現在、カプセル原料やイオン導入美顔器など、化粧品を浸透させる技術がたくさん開発されています。私は、全く新しいアプローチとして、化粧品を受け入れる側である肌本来のポテンシャルを上げ、化粧品の浸透を促進することができれば根本からお悩みを解決できると考え、「お肌が持つタンパク質」と「浸透性」に焦点を当てた研究を始めました。

肌のターンオーバーと密接にかかわる「カリクレイン7」に着目

アテニアでは、2003年からお肌のタンパク質に着目した大規模な肌調査を進めてきました。
その中で、お肌の角層に存在するタンパク質のひとつ「カリクレイン7」が皮膚の弾力性と関係することを見出し2008年には国際学会で発表。そこから約15年間、「カリクレイン7」の機能や肌状態との関わりについてあらゆる角度から研究を進めてきました。
「カリクレイン7」は角層の剥離を促す酵素ですので、お肌のターンオーバーと密接に関係しています。このタンパク質が化粧品の浸透性を改善するキーファクターになるかもしれないという可能性を見出し、「カリクレイン7」の研究をさらに進めました。
その結果、角層中の「カリクレイン7」量が少ないほど角層が厚いことを突き止めました。また、「カリクレイン7」量が40代以降で減少していくことも明らかにしました。

表1:「カリクレイン」量の年代別変化

このことから、年齢による肌のごわつきの一因がやはり「カリクレイン7」の減少に伴う角層の肥厚であると考えました。そこで、角層中の「カリクレイン7」量が低い人、高い人で化粧品成分の浸透がどのように異なるのかを確認する実験を行いました。結果、「カリクレイン7」が多い人では、少ない人に比べ化粧品成分がより深くまで多く浸透することが分かりました。つまり、「カリクレイン7」を増やすことで、ピーリングなどの特別なことをしなくても、自然な角層剥離を促し、スキンケア成分を浸透しやすい肌に整えることができることが分かりました。さらに、「カリクレイン7」が基底膜コラーゲンやエラスチンを増やすこと、弾力をもたらすことも明らかにしました。

表2:「カリクレイン7」量と弾力性

つまり、「カリクレイン7」は角層のケアだけでなく肌の弾力にも良いタンパク質だったのです!間違いなくお客様に喜んでいただける内容が実証でき、長年の研究の中で感じていた不安や悩みも一気に霧が晴れたように感じました。

注目の“長寿ビタミン”「エルゴチオネイン」

「カリクレイン7」が肌へのキーファクターになることを発見したので、続いて「カリクレイン7」を増やす働きをする成分を探索しました。数ある美容成分の中から40種類に当たりをつけて実験を行い、「エルゴチオネイン」にその機能を見出しました。「エルゴチオネイン」とは、タモギタケというキノコから抽出される成分で、皮膚を含めからだの様々な臓器に存在するアミノ酸の一つです。長生きするのに必要な成分だと考えられていることから、‟長寿ビタミン“とも呼ばれています。「エルゴチオネイン」をお肌に塗布することで、化粧品成分の浸透を上昇させることにも成功しました。

表3:「エルゴチオネイン」塗布によるナイアシンアミド浸透の変化)

以上のことから、「エルゴチオネイン」で「カリクレイン7」を増やすことによって、化粧品を浸透させつつ、弾力のケアも叶えることが期待できるのです。