Vol.03

見た目年齢を左右する
“目尻のシワ”の
原因を探れ!

エイジングケア研究

総合研究所 ビューティサイエンス研究センター
開発担当研究員 近藤
2023年9月時点

「シワ」は年齢を重ねるごとに増加する肌悩みの一つであり、特に「目尻のシワ」はお顔に老化した印象を与えてしまう大きな原因となります。この「目尻のシワ」は30代後半から個人差が大きくなってきます(図1)。そこで、目尻特有のシワの原因を探す研究を開始しました。

図1 目尻のシワの深さと年齢の関係

目尻の毛穴の広がりと連結が原因で、毛穴シワが出来てしまうことを発見

目尻のシワはほうれい線などのシワと異なり、1本の深いシワではなく、細かいシワがいくつか存在しています。
目尻を拡大して観察してみたところ、図2に示す通り、シワが目立つ目尻では隣接した目立つ毛穴が楕円形にゆがみ、毛穴同士がつながっていることにより1本の溝となり、シワが出来ていることを発見しました。

図2 目尻のシワと毛穴の関係

アルギナーゼが目尻の毛穴の広がりに関係していた

次に目尻の毛穴の広がりと関係が深いタンパク質としてアルギナーゼに着目しました。アルギナーゼは表皮の特に顆粒層に多く存在し、紫外線からのダメージを防ぐ役割を果たしています(図3-1)。また皮膚の表皮と真皮の間に存在する基底膜(図3-2)が乱れると肌のハリが失われ、毛穴のゆるみへとつながることが分かっています。私たちは毛穴の横たるみの原因の一つである基底膜とアルギナーゼの関係を検証しました。培養した表皮角化細胞を用いてアルギナーゼ遺伝子をノックダウンし※1、紫外線照射により基底膜の分解酵素であるMMP-9※2の遺伝子発現量を確認しました。その結果、図3-3に示すように、アルギナーゼを低下させることによりMMP-9の発現量が増加し、さらに紫外線の照射により発現量がより高まることがわかりました。つまり、アルギナーゼの低下が、肌のハリや毛穴のゆるみへとつながっているのです。

図3(1〜3) アルギナーゼと基底膜の関係

実際に目尻の毛穴の面積と数と角層中のアルギナーゼ量を比較した結果、図4に示す通りアルギナーゼが特に少ない人は目元の毛穴数が増え、大きくなる傾向が高いことがわかり、毛穴の広がりにアルギナーゼが深く関わっていることが考えられました。

図4 毛穴の面積と数とアルギナーゼ量の関係

「酵母エキス(1)」が、表皮細胞のアルギナーゼ産生を高めることを確認

アルギナーゼ量と毛穴の広がりが関係していることから、肌のアルギナーゼ量を高める成分を探索した結果、サッカロミセスに属する酵母を加水分解処理して得られた液を精製した「酵母エキス(1)」にたどり着きました。図5に示す通り、表皮角化細胞に「酵母エキス(1)」を添加することにより、アルギナーゼ量が増加することがわかりました。このように表皮角化細胞のアルギナーゼ量を高めることで、毛穴の横たるみや広がりを抑え、キメとハリの整った肌になることが期待されます。

図5 酵母エキス(1)の肌への効果
  • 用語説明
  • 遺伝子ノックダウン:特定の遺伝子からのタンパク合成過程を阻害する遺伝子操作方法。特定のタンパク量を減少できる。
  • MMP-9 (Matrix Metalloproteinase 9):基底膜の構成成分となる4型コラーゲンや7型コラーゲンを分解する酵素